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電気事業者の反知性

  • 2021年06月26日

 25日に北電の株主総会が開催されたが、残念ながら北電の経営陣は未だに「原発神話」の呪縛から離れられなく、今後のエネルギーの向かう方向性を冷静に判断することを忌避しているかのように見えます。

 2011年のフクシマ第1原発事故以降、1号機から3号機まで休止したままで10年以上が過ぎています。

 この間、北海道の電力は石炭火力を中心に維持されてきましたが、世界的なCO2削減の取り組みに呼応して、政府も「ゼロカーボン」政策に舵を切り始め、石炭火力は随時転換を求められています。

 また、各国とも再生可能エネルギーを一段と加速し、原発への依存からの脱却を進めており、日本も例外では無く、これまで日本のベースロード電源と位置づけられていた原発は、今や新設は不可能となり、休止している既存炉の再稼働や延命で生き残りを図っているのが現状です。

 さらに、原子力規制委員会の安全審査は、最新の知見に合致しているかどうかを見極めるだけで、更田委員長も「追加の安全対策によって事故が防げるとは言っていない」と話しています。

 すでに世界の常識は、既存の原子炉より安全性が向上している先進型原子炉(第3世代、第4世代)についても、コスト、公共の安全、廃棄物処理、運用の柔軟性、グローバルな安全保障の面で、温暖化対策の他の選択肢である再生可能エネルギー、省エネ、蓄電池などに対抗できないと判断しています。

 電力会社が念仏のように唱えるコストでさえも、米国の2020年における新しい原発の発電コスト(初期建設コストと運転コストの両方を含む、廃棄コストは想定出来ず算入していない)は約163ドル/MWh(メガワットアワー)以上であり、風力・太陽光による発電設備の平均コスト約40ドルMW/hの4倍となっていると米国エネルギー情報局が発表しています。

 当然、電力事業者である北電の経営者が、最新の科学的な趨勢を知らないはずが無く(知らないのなら、無責任と言うほか無い)、さらに、日本国内の核燃サイクルは破綻しており、北電が目指しているプルサーマルも絵に描いた餅と化していること、使用済み核燃料の処分も見通せないことなど、既に原発には未来が無いことを感じているはずです。

 それにも関わらず、株式総会で、毎年100~200億円の核燃料を無駄に調達していることに対して「再稼働しない場合は無駄な経費となる」と指摘されたことに対し、「再稼働しなかった場合という仮定の質問には回答を控える」とかわし、具体的な契約年数なども示さなかったようです。

 経営者(責任者)というものは、先々に起こりうる可能性のあるリスクをリストアップして、その対応策をプラン化しなければなりません。それもプランA・プランBなど臨機応変に対応できるように。

 それが仮定のリスクに立ち向かう経営者の責務です。そのことはフクシマ第1事故が如実に教えてくれています。

 安倍氏や菅氏のようにでもなったかのように勘違いしている北電の藤井社長。

 しかしそれは、自分が科学的な根拠を否定して感情をむき出しにする反知性であることを、公開の場でカミングアウトしているということです。


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