電車と観光客(ブログ3796)
- 2025年01月05日
函館山に観光客が押し寄せ、夜景が見えず苦情が函館市に寄せられているという記事が新聞で報道されました。
コロナ禍後の観光ブームは世界的なもので、その影響が世界の観光地を悩ませています。
つまり「オーバーツーリズム」が観光地に住んでいる住民の生活に支障を来しているということです。
スペインのバルセロナ、「サグラダ・ファミリア教会」で有名ですが、この間、住民による「反観光」のデモが相次いでいるようです。数千人の参加者が、シュプレヒコールを上げながら街中を行進し、観光客に向けて水鉄砲を撃つなどの実力行使までしています。
過大な観光客のせいで、短期賃貸住宅が増え住民の住宅事情が悪化、家賃が過去の7割近く上昇した事が原因で、当局は新しい短期賃貸住宅の貸し出しを禁止していますが、即効性のある効果には至っておりません。
イタリアのベネチア、水の都として有名ですが、昨年4月から日帰り観光客に対して1人当たり5ユーロ(約810円)を課すことを試みた他、団体客を25人以下に制限する措置も導入していますが、効果が現れておらず、世界遺産の危機に直面しています。
オランダのアムステルダムは、中世のヨーロッパ建築が多いほかに、様々な見所もあって、観光客が非常に多くなり、市は年間観光客を約2,000万人に制限、観光税の引き上げやクルーズ船受入の制限、ホテルの新規建設禁止の措置を行っていますが、観光客の入込みが止まらず、酒を飲んで高揚した若い外国人が、街の中で騒ぐなどの迷惑行為が頻繁に起こり、住民の怒りを買っています。
一方、観光業は各観光都市にとって裾野が広い産業で、投資や雇用を生み出す経済の主要な柱にもなっていることから、行政にとっては観光と住民生活が何とか両立できないかと頭を悩ます事になります。
さて、函館市の観光客の入り込みも、市民や行政、観光業の方々にとっては有り難い事ではありますが、市内ではオーバーツーリズムが現実の問題となっています。
冒頭にも触れましたが、世界三大夜景(百万ドルの夜景)と称して有名な函館山からの夜景を見ようと、夕暮れからロープーウウェイで山頂に登るために、函館駅前から頂上行きのバスは長蛇の列、無論、ロープーウウェイ山麓駅に行くための電車は満員で安全地帯にも観光客が溢れています。
市電は市民の足ですが、市民が利用できないという現象が起きています。電車の便数を増やそうにも運転手が不足していますし、せっかく電車の免許を取得した新人運転手も、正職員になれないことから給与が低く、同じ軌道であるJRに転職するなど運転手の増員を図る事が困難となっています。つまり、市民の市電を取り戻すのには、市電の運転手の労働環境を改善し、運転手を増員して電車の運行数を増やすことが必須です。
函館市は、市民生活と観光都市を両立するために、まず足下の問題、電車運転手の正職員化を実行することで解決する努力をするべきではないでしょうか。