IAEAの報告書(ブログ3286)
- 2023年07月22日
原子力市民委員会が、「IAEA包括報告書はALPS処理汚染水の海洋放出の『科学的根拠』とならない。海洋放出を中止し、代替え案の実施を検討すべきである。」とする見解を明らかにしました。
その見解によると
<【主な内容】
●IAEAの包括報告書は、事故炉からの放出であることの重大性に関する認識が不足し
ている。
●IAEAのレビュー(検証・見直し)は、現実の海洋放出の安全性を保障するものでは
ない。
●海洋放出はIAEA安全基準のうち、少なくとも(1)「正当性justification」、(2)「幅
広い関係者との意見交換」に適合していない。
●福島第1原発の事故処理プロセスの全面的な見直しが必要である。強引な海洋放出は、
福島第1原発の事故処理や被害回復の妨げになる。
●海洋放出を伴わない実現可能な代替え案はすでに提案されている。海洋放出を中止した
上で、代替え案の実施を検討すべきである。
とした上で、
IAEAは「国際的な安全基準に整合的(consistent)である」と報告書を発表し、政府・東電の計画が「お墨付き」を得たとされている。
しかし、IAEAの包括報告書に明記されているように、21年4月に日本政府が「海洋放出」を行う事を決定した後に日本政府の依頼によって始められた。そしてこれは、東電が提出した「放射線影響評価報告」、「原子力規制委員会による審査プロセス」がIAEAの安全基準に適合しているかを確認するものである。
先ず、明らかにしなければならないのは、IAEAは原子力利用を促進するための国際機関である。IAEAの安全基準は原子力施設の安全性に重きが置かれ、環境保護や人権といった観点からは必ずしも中立的機関では無い。実際IAEAは、海洋放出以外の選択肢について評価しておらず、海野生態系や漁業への長期にわたる影響を評価しているわけでもない。
そして、今回の調査はIAEAの安全基準に含まれている全ての項目について包括的にレビューしたわけではない。
あくまで日本政府の海洋放出決定を前提に、日本政府・東電が提出した資料に基づき、海洋放出決定を追認したものである。したがって、IAEA包括報告書をもって、海洋放出そのものが「科学的に正しい」とは言えない。>との見解を明らかにしています。
さて、原子力市民委員会という市民レベルの団体が行った評価に政府はどのような反論を示す事が出来るのでしょうか。
多くの国民も、「IAEAのお墨付き」という政府のプロパガンダ(主張の宣伝)に流されてしまいがちですが、IAEAの調査が海洋放出ありきであったことが明らかになったということは、海洋放出へのお墨付きに大きな疑義がある事になります。
当然、中国などはIAEAの報告書について更に高度で科学的な分析を行っているものと思います。
その中国に対し、日本はどのようなカード(説得材料)を持っているのでしょうか。
そして日本国民への説明も、単にIAEAの報告書の通りでは説得力を持ちません。
とりわけ、地元福島県民や漁業関係者には分かりやすい説明が必要です。
その事を行わず、夏に海洋放出を強行したならば、大きな禍根を残すことになります。