TPPのメッキがはがれ始めた
- 2016年09月01日
政府・与党が、農産物の価格が低下し、農家の収入が減少した場合に直近5年間の平均収入の8割を確保できる収入保険制度を検討しているとのこと。
これは、TPPによって起こる低関税の輸入農産品が国産より安く市場に流入し、結果として農家の収入が激減することを見越した対応策として浮かび上がったものです。
これまでの保険は農業共済が有りましたが、自然災害にしか適用せず、野菜などは適用外でした。
また、農産物の品種や作付面積によって掛け金の違いはありますが、農家一戸あたりの掛け金は年間数万円ほどで、麦などは十数万円ほどの掛け金を払うというケースが有るにせよ、農家にとっても負担可能な掛け金でした。
一方、新たに検討されている保険は全ての農産物を保障対象にしていますが、TPPによって大きなダメージが想定されているのは小規模の農家で、そのことによって収入が不安定になるのは明らかであり、保険で手厚く対応するからのいって保険料率も高くなるのでは、何をか言わんやであります。
そもそも、各農家の減収をどのように判定するのかも決まっていませんし、その基準が農家の納得いくものかも明らかになっていません。
これを見ても判るとおり、政府も与党もTPPによって農家が大きなダメージを負うことが現実に起こることを政府・自民党自らが危惧しているという証です。
これまでの国会審議においても、重要農産品5品目は守られていると真っ黒に消された書類を見せて強弁していましたが、もはや騙しきれなくなってしまったようです。
今回の参議院選挙に置いても、農業県である東北地方の一人区は大敗をし、自民党の農政族は農家の怒りをその目で見ることになりました。
その代償として考えられた保険ですが、手厚い保護策になればなるほど掛け金は高くなるのは必定となります。
さらに、TPPに対抗できるよう国内農業の競争力を高めるという理由で、国内農業改革を急速に推し進める議論を本格化させようとしています。
政府・与党は、この国の農業を小規模農業から大規模化させて、どのような姿にしようとしているのでしょうか。
米国が、TPPと同じようにEU(欧州連合)と交渉を進めているTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定:トランスアトランチック・トレード・アンド・インベストメント・パートナーシップ)は、米国の要求にEU側が反発し、ドイツやオーストリア、フランスが、TPPと同じようなISDS条項や政府調達、農業の規制緩和などに異を唱えています。
EU諸国は、交渉が単に米国にのみ有利になることを充分に理解し、国益に反することには乗らないという態度を明らかにしています。
日本は、米国に有利になること、国益に反することを国民を伝えず、騙し続けています。
今回のTPP対策の新保険がそれを如実に表しているのではないでしょうか。
農業だけではなく、日本のリスクとなるTPPには断固反対しなければなりません。