ミニ新幹線を現駅に?
- 2021年10月27日
今回の衆議院選挙の公約で、「新函館北斗駅から現函館駅までミニ新幹線を走らせる」と訴えている方がおります。
これによると、<10年後、新幹線が札幌まで延伸したときに、JR北海道は新函館北斗駅ー現函館駅間の「函館ライナー」から撤退する事が決まっており、そこで、JR北海道がこのミニ新幹線を保有し、線路使用料を支払って現函館駅に乗り入れることで、沿線自治体も財政負担が減り、JRは鉄道の使命を果たし、利用者は便利なり観光函館の地位が向上する>というものです。
さて、果たしてそんなにうまい話があるのでしょうか?
これによると「沿線自治体良し、JR良し、利用者良し」の三方良しとなるようですが、かなり高いハードルが待ち受けています。
先ず、新幹線の札幌延伸時に函館ライナーをどのようにするのか、現在「北海道新幹線並行在来線対策協議会」で検討されており、JR北海道が撤退するという事は正式に決まっておりません。
さて、現在函館ライナーを運行しているJR北海道は大きな赤字を抱え、道内8路線の撤退を北海道や沿線自治体にお願いしており、このJR北海道が果たしてミニ新幹線の運営主体となるのか疑問です。
また、現在の特急が利用するこの区間は狭軌となっていますので、新たにミニ新幹線用に広軌のレールを敷かなければなりません。無論、青函トンネルはのようにレールを1本追加する工法もありますが、これは、青函トンネルが最初から新幹線仕様となっており、上り線と下り線の間隔が広く取られているからすれ違いが可能ですが、新函館北斗駅ー現函館駅間の複線は通常の線路幅ですから、すれ違うには拡幅が必要になり現在の運行路線ではこの手法が取れません。
さらに、この区間は電化がされておらず(長万部駅~函館駅間)、新たに電化工事が必要となってきます。
新函館駅ー現函館駅間は約18kmで、現在のはこだてライナーでの所要時間19分、時速約100km、ここに時速160kmのミニ新幹線を走らせて更なるスピードアップをする必要があるでしょうか。
鉄道を知っている方は、鼻白んでしまいます。
また、建設費用は、JRが支払う貸付料を差し引いた残りの3分の2が国、3分の1が地方負担で一定額が交付税措置がされますが、概算で総費用の約1割程度が実質負担となります。
以前、北海道新幹線の現駅乗り入れを函館市が強く要望しましたが、当時の髙橋はるみ知事は、総額1,000億円が必要であり難しいと結論を出しました。
その当時に積算でも上下方式の下の部分だけで1,000億円ですからその1割で100億円、当然、道はそれを負担するだけの財政状況では無く、地元の函館市においても難しいでしょう。さらに、工事費は当時より高騰しています。
もう一つ、ミニ新幹線車両の建設費はJR北海道なのか地元なのか。
そして、肝心の函館市がそれを望んでいるのでしょうか、市民に財政負担以外どのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
公約をされている方は、具体的な考えを示す責任があります。
この方は前回17年の選挙で、<函館にドーム球場を建設して新しいプロ野球チームを誘致する>と公約しました。荒唐無稽なアイデマンとしか思えません。